
毎年5月下旬から6月にかけてたくさんのイルカたちが積丹半島にやってきます。
一口にイルカと言ってもその種類は80種にも及びます。イルカはクジラ目の中の
4科(マイルカ、ネズミイルカ、イッカク、カワイルカ科)45種となります。
その中で、この時期に沿岸、2〜3マイル沖合で観察できるのはマイルカ科のイシ
イルカとカマイルカです。カマイルカは群集性が強く500頭を超える大群が港の
すぐ近くでジャンプしながら遊んでいる光景を見ることもあります。海一面がイル
カで覆い尽くされた時の迫力は、なかなか言葉で言い尽くせるものではありません。
とにかく、実際に見てみるしかないでしょう。
イルカといっしょに1〜2時間クルージングすることもあります。そんな時いつも
考えることは、『彼らはどこから何をしにやってきたのだろう?一体どのくらいい
るのだろう?』ということです。そこで、カマイルカとイシイルカ、さらにイルカ
ほどの頻度で観察することは難しいのですがツチクジラ、シャチについても簡単に
お話してゆくことにします。
● カマイルカ「鎌海豚」
鎌の形の背びれをもった海の豚。あまりにもひどい名前のようですが、確かに鎌そ
のもののいかにも切れそうな白と黒の刃物状の背びれをしています。
世界的にもイルカ漁や捕鯨の歴史は古く、西暦800年からすでにノルウエー人が、
12世紀にバスク人、17世紀以降オランダ人、イギリス人そしてアメリカがイル
カ漁や捕鯨を始めています。日本においては1600年前後に船団を組んだ効率の
良いこれまでとは違った方式により、本格的に開始されました。当時、クジラ類は
重要な食料源として、世界中の海で捕られていました。
その後、多い年には年間2万頭に及ぶクジラが捕獲されました。その結果、個体数
の激減をまねきました。
1982年の国際捕鯨委員会により商業捕鯨停止が決定されて以降、捕獲枠の範囲
内での捕鯨をしています。イルカはまさしく海の豚そのものだったのでしょう。
カマイルカの分布は、東、南シナ海、中国大陸沿岸、黄海、紀州〜南千島にかけて
と、北緯40〜50度の太平洋に帯状にわたっています。水温8〜21度の範囲を
好んでいるといわれます。大きさは、雄、雌ともに性成熟(7〜9歳)で170〜
210cm。背面の体色は黒または黒褐色。体側面は白黒のぼかし模様で腹面は白。
最高年齢は44歳の記録があります。体は小さくジャンプを得意とし、配色も美し
いので水族館では一番の人気者。行動は敏捷的で瞬間的に時速55kmで泳ぎます。
数百頭〜1000頭の群れが船の周りにやってきて、船首波に乗ってジャンプしながら
たわむれる姿は壮観です。食性は幅広く、イカ、マイワシ、ハダカイワシ、ブリな
どを追って食べています。個体数は日本海、東シナ海に8万5000頭。
太平洋沖合いに100万頭と推定されています。ワシントン条約の付属書にリストされ
ており、1993年から日本では捕獲が禁止されています。
● イシイルカ「いし海豚」
英語では「ルースターテール」と呼ばれています。雄鶏の鶏冠という意味で、水面を
泳ぐ時、逆円錐形の水しぶきを上げるため似ていることからこの名がつけられました。
実際に船上で見ていても、ジャンプせずにしぶきだけが上がるのですぐに見分けられ
ます。体色は黒で腹側に白のおおきな斑点があります。太平洋系のリクゼン型はこの
白斑点が肛門から胸鰭基部にまで及び、日本海系のものは、背びれの下で止まってい
ます。体長は230cmとネズミイルカの仲間では最も大型です。
船に対する好奇心が強くかなり遠くからでも船の存在を知って接近し、船首、船尾、
舷側にできる波にのりついて泳ぎます。イシイルカには8つの個体群があるといわれ
ています。オホーツク海中部(リクゼン型)、北部、南部、カムチャッカ半島南方海
域、アリュウシャン列島南方海域、アラスカ湾中央部、ベーリング海中央部、北アメ
リカ西海岸(イシイルカ型)です。個体数は全体で100万頭とも300万頭ともいわれて
おり、今のところ、絶滅の恐れはないといわれています。
日本近海ではそれぞれ22万頭と推定されております。
しかし、年間2万頭近くが突きん棒漁業と流し網により混獲されており今後の個体数
の動向に注意が必要と言われています。
● ツチクジラ「槌鯨」
額が垂直に切り立ち、細長いくちばしが前方にのびている形が槌に似ているのかどう
かあまりよくはわかりませんが、アカボウ鯨の仲間では最大の12mを超えるクジラです。
「北の海のクジラ」と言われる日本近海に特に濃密な分布をもっています。
太平洋側では伊豆半島以東・北緯34°以北、日本海側では北緯36°以北に限られ
ており、夏に水深1000〜3000mの大陸斜面に集まります。オホーツク海では冬に流氷の
中で見られますが、北海道沿岸では4〜11月の夏場に発見されることが多く、とく
に日本海には、外海にいかず1年中生息している個体群がいるといわれています。
カムチャッカ根で釣りをしている人やこの海域で定置網をいれている漁師さんたちの
目撃情報はよく耳にするところです。昨年も、幌武意港の前浜に現れました。
また、今年の春に10mのツチクジラが野塚の浜にあがりました。ツチクジラの潜水
能力は驚くほどです。水深2000m、潜水時間1時間以上も潜っていられるといわれます。
捕鯨砲で撃たれると垂直に潜って2000m以上も綱を引き出すそうです。まさにマッコ
ウクジラ並です。寿命は雄が84年、雌は54年と長く、10〜25頭の群れで生活しています。
日本近海の個体数は太平洋5000頭、日本海東部1500頭、オホーツク海660頭と推定され
ています。ワシントン条約の付属書にリストされており、日本では年間54頭の捕獲を
許可しています。
● シャチ「killer
whale」
海の王者、海の殺し屋などと呼ばれており、海洋の中では食物連鎖の最上位にある肉
食哺乳類です。シャチの胃から、イカ類や多くの魚類、エイ、サメ、ウミガメ、ペン
ギン、海鳥類さらに海獣類の殆どが出てきます。
イルカ類、アザラシ、トドなどのアシカ類、セイウチなどです。また、ザトウクジラ
などのヒゲクジラ類やマッコウクジラなどの歯クジラ類も襲います。しかし、サメと
違って人間を襲った例は知られていません。20年ほど前に幌武意ピリカで冬潜水中、
いきなり出くわしたことがありましたが、やはり怖くてすぐにエギギットしました。
毎年トドの来る1月頃3〜4頭の家族を見かけることがあります。シャチは2つの異な
った生活のタイプがあることが知られています。
ひとつは、海域に定住する『レジデント』、もうひとつは、より広い範囲を行動圏に
持ち、まれにしか姿を見せないトライジェント(通り過ぎるもの)です。レジデント
はその海域に豊富なサケ、マスなど決まった魚類だけをたべますが、トライジェント
は回遊中に遭遇するあらゆる生きものを捕食します。
積丹半島や知床半島に現れるシャチは北米大陸北西岸のトライジェントの可能性が高
いと考えられます。そのため、おそらくトドやアザラシたちもそしてイルカ、クジラ
なども捕食しているのでしょう。水中ではあまり遭遇したくはありませんね・・・・。
● クジラ・イルカはどんな動物か。
2億5000万年前に始まる中生代―巨大な恐竜が闊歩し、いまより暖かかった海には、
爬虫類の魚竜や首鳥竜が進出していた。繁栄を謳歌していた彼らが突然地球から姿を
消したのは、今から6500万年前のこと。それまで巨大な恐竜の足元でひっそりと暮ら
していた哺乳類の仲間が、かつての住人がいなくなった環境へ、多くの種に分かれな
がら生息領域を広げていく。このときクジラやイルカの先祖達は海をめざした。
彼らは水辺から浅瀬へ、やがてその先に亡羊と広がる大洋にむけて進出していった。
哺乳類としての体をひきつぎながら、海洋生活への適応をとげたかれらは、数千万年
という時間をかけて、それぞれの生きるかたちをつくりあげてきた。アンブロケタス
のようなムカシクジラ類が姿をけして新たなクジラのグループが台頭する。
現在生きるクジラやイルカにつながる歯クジラ類とヒゲクジラ類がそれだ。
ハクジラは水中を泳ぎまわる獲物を効率よくとらえるための細く長いくちばしと、一
様に尖った円錐形の歯そなえはじめる。
そして何より、海のなかを泳ぎまわり、獲物をとらえるために、エコロケーション
(反響定位)のしくみを早い時期に発達させ始めた。
また、ヒゲクジラは海中の小生物をこしとって食べる捕餌方法を身につけ、地球規模
の大回遊を可能にする巨大な体をつくりあげた。
● クジラ・イルカの声
海中は空気中に比べて、視界のきかない世界である。しかし水は空気に比べて4倍の
速さでよく遠くまで音をつたえてゆく。この環境の中で、クジラやイルカは聴覚を発
達させるとともに、さまざまな声をもつようになった。きわめて低い音を連続して発
するクリック音はエコロケーションや強い音圧で魚を麻痺させるときに用いられる。
笛をふくような声、ホイッスルは個体間のコミュニケーションにつかわれる。
いくつもの周波数成分が重なり合う層状音は興奮したり相手を威嚇するときにつかわ
れる。また、ザトウクジラは繁殖の季節に規則正しい音のユニットを発します。
『歌』と呼ばれるこの調べはライバルとのあいだに一定の保つためといわれている。
シロナガスクジラが仲間との交信のために発する極低音(50〜60ヘルツ)の音は数
千キロも届くといわれている。
シャチが発する声のなかに「コール」(錆付いたドアの軋み音)がある。
ほとんどのレジデントンのポットはそれぞれ特徴的な7〜17個の明確なコールをもっ
ている。こうしたコールは群れとしての行動をまとめたり、視界からはずれた仲間と
接触を保つための機能やサケを追う時に数キロ四方に散らばった仲間との交信につか
っている。潜水艦のソナーはハクジラのエコロケーションを真似したものだが、その
しくみは、一連の小刻みなクリック音を前方に発し、物体に当たってはねかえってき
た反響をきくことで、位置やかたち、大きさを知ることが出来るものである。
このしくみで暗い海底の砂の中に潜む魚でも簡単に捕まえられる。
● 行動
クジラやイルカが見せる様々な行動の意味あいは、その多くがまだ謎のままに残され
ている。ザトウクジラやシャチなど何種かの鯨類は、しばしば海面上に巨体を躍らせ
る行動を見せる。この豪快な行動はブリーチ(ブリーチング)と呼ばれ、体表の古い
組織や寄生虫を落とすため、あるいは巨体が海面をたたく時の音を仲間とのなんらか
の合図にするといった、いくつかの意味が考えられている。
水中にすむクジラ・イルカの仲間がとりわけ聴覚を発達さたことは確かだが、視覚も
重要な感覚となっており、特に海面から顔をだしながらあたりの様子を覗う行動を見
せることがある。こうした行動はスパイホップとよばれて、特に沿岸で生活する鯨類
で頻繁に観察される。泳ぐ時の姿勢のままで尾びれを前方に反らせ、あるいは海面に
仰向けになった姿勢で腹側にまげて尾びれを海面に見せ、あるいは海面近くで逆立ち
して尾びれを空中高く突き出したあと、力まかせに海面にたたきつける。
この『尾びれたたき』行動では、激しい水飛沫がはじけ、水音があたりに響く。
威嚇、もしくは仲間との何らかの合図など、さまざまな解釈がなされるこの行動の本
当の意味は、まだ謎のままだ。海面で体を横たえ、空中に突き出した片方の胸びれで
海面を強く打ち付ける行動を見せることがある。尾びれたたき同様、コミュニケーシ
ョンの手段と考えられている。
クジラやイルカが海原で見せるさまざまな行動にこめられた意味あいは、その多くが
人間にはまだ謎のまま残されている。彼らがこれから先も生き続けていくことが出来
たなら、いつの日か、その意味を読みとることができるかもしれない。
● 日本における鯨類の漁獲
〇調査捕鯨
国際捕鯨取締り条約第8条の「科学研究」の名目により、5億円の補助金を日本鯨類研
究所に与え、南氷洋400頭、北太平洋100頭のミンククジラを捕獲調査させている。
1頭1000万円の販売代金は研究と広報に充当。
〇小型捕鯨業
捕鯨船5隻がツチクジラ54頭、マゴンドウ、タッパナガ各50頭の枠で操業。
そもそもクジラの定義が不明確で締約国会議の提出リストから漏れていることを理由
に対象外としているが締約国の多くは非難している。
ツチクジラ1000万円、ゴンドウ500万円。
〇石弓漁業
ゴムで銛を発射する捕鯨業の定義をくぐった漁法。沖縄名護で6隻マゴンドウ100頭、
オキゴンドウ・ハンドウイルカ各10頭。
〇追い込み漁業
イルカの群れを湾内に追い込み捕獲する。和歌山太地と静岡冨戸で操業。ハンドウ、
マダライルカ各1000頭、スジイルカ520頭、マゴンドウ、ハナゴンドウ各300頭、オキ
ゴンドウ40頭。壱岐で駆除名目でハンドウイルカ50頭。いずれも1頭数十万円。
〇突きん棒漁業
船首に近づくイルカを電流の流れる手投げ銛で突いて捕る。岩手、宮城、青森、北海
道の280隻が」イシイルカを対象に2万頭捕獲。和歌山で100隻がハナゴンドウ250頭、
ハンドウ、マダラ、スジイルカ各100頭枠で操業。
〇混獲、定置網
網にかかって死亡した鯨類がひそかに解体され市場に流れている。ミンクだけでも年
間50〜100頭が混獲されていると思われる。